【第一章】世界の支配者篇 〜定められしサークリファイス〜
第18章 魔人の策略
「フェージャ」
声の主は香織だった。
彼女の手には拳銃が握られ、その銃口はフョードルに向けられていた。
「悲しいですね、あなたに拳銃を向けられるなんて‥‥」
「分からないんですか?それだけのことをあなたはしたんです」
「いいのですか?私に構っていれば太宰君が死にますよ?」
「その心配はいりません」
その言葉に引っかかったフョードルは真坂と思い、後ろに居るであろう太宰がいる場所に目を向ける。
しかし、そこには太宰がいなかった。
重症を追ったはずの彼が自力で逃げ出すのは難しい。
「なるほど、異能生命体ですか」
「‥‥一つ聞いてもいいですか?」
「何ですか」
「回りくどい方法で私に近付いた理由は?あなたなら攫うことだって出来たはずです」
「その様子からして、太宰君に聞いたようですね。確かに誘拐して僕の元に連れてくる方法もありました。しかし、グラナート一族の娘を乱暴に扱いたくなかったので」
(グラナート一族?何言ってるの?)
時間が経つにつれ、香織は怒りを募らせる。
「あなたは何故そんなに怒っているのです?」
フョードルの問に香織は怒りをあらわにする。
(分からないの?この人には人の心が無いの?)