【第一章】世界の支配者篇 〜定められしサークリファイス〜
第18章 魔人の策略
社員寮に帰った香織はベッドの上で仰向けになる。
カフェの後、太宰は福沢に今日あったことを報告したようで福沢は早く寮に帰るように香織に言った。
帰りは太宰に送って貰い、今に至る。
(今でも信じられない。あの人が盗賊団だなんて‥‥)
あの優しそうな表情は嘘だったのだろうか。
そう思ってしまうと胸が痛い。
(何も考えたくない)
ゆっくりと目を閉じていると眠気がやって来る。
◆ ◆ ◆
目を開けると香織の瞳に映ったのは太宰とフョードルが何かを話している様子だった。
「『本』の正体は一冊の小説だ。書いた事が事実となる白紙の文学書」
(本って、フィッツジェラルドが言ってたあの?)
「えぇ、私はその本を使って罪の−−異能者のない世界を創ります」
(異能者のない世界?)
「やって見給えよ−−やれるものなら」
「では、いずれ……『約定の地』にて」
太宰は意識を失ってバタリと倒れる。
(え‥‥)
倒れた太宰を見てみると彼の身体から血が出ていた。
(うご‥‥かない)
駆け寄ろうにも身体が動かない。
フョードルは太宰の横を通って立ち去る。
(太宰君!)
金縛りのように動かない身体を必死に動かそうとするも駄目だ。