第55章 涙
「離れなさい!!」
「三蔵の事…好きなだけなんでしょ?」
「……」
「私だって好きだもん…解るよ…」
「……ッッ…」
「ただ、譲れない人が一緒だっただけ…あわれな女性だなんて思ってない……私の方が甘えてた…言いたいことはっきり言えてれば…こんなことにならなかったかも知れないのに…ごめんなさい…」
「……ッ…ヒック……」
「どうしても流刑が変えられないって言うなら…この街の人間じゃない私にはとめられない…でも…誰かを想う気持ちの強さまで…否定しないで…怜音さんの強い意思まで…否定しないで……」
「……なん…で……」
「…同じ女…だから…三蔵に恋して…愛おしいって想える相手が同じ……女だから……」
「……ヒック…」
「もういいだろう、離れなさい!」
強引に引き離された雅。そのまま怜音は連れていかれた。
「自分を殺そうとした相手に良くもまぁあんな甘いこと言ってられるな…」
「だって…三蔵の事好きだって想いは一緒だから…」
「……同じじゃねえよ…」
「…でも…矛先がちょっと間違えただけで、三蔵を好きだってことは同じだよ」
「それってかなり大きな差じゃねぇの?」
「そうだと思う…」
「紙一重かもしれないけど…」
「……そういうもん?」
「んーー、まぁ、雅がそうだって言うならそうなんか?」
「三蔵も身が持ちませんね」
「まったくだ…」
「……雅?…気にするなとは言えませんが…あなたは三蔵の奥さまなんですから…自信もってください?」
「…八戒…」
「その慰め方もどうかと思うけど?」
「でも事実ですし?」
「……それじゃぁ荷物まとめて出るぞ」
「そうですね」
「…おい、雅」
「何?」
「…もう少し自分に自信持て……」
「え?」
「それに、今回みたいなことが次あっても俺はもう嫌だからな…」
「…嫌って……」
「あーー、菩薩とちゅうしたもんな…」
「言うな!!」
「…え?」
「輸血変わりに、三蔵の血気を移し変えてくれたんですよ。菩薩さんが来て」
「……そうだったんだ…」
「その時にゃ死にそうな位フラッフラしてたよな…」
「貴様は少し黙ってらんねえのか!」
「…でも、すげえかっこいいよな…神様…すげえ事出きるんだもん」
「キラキラした目で見てたよな。猿」
「猿って言うな!!!」
「ほら、行きますよ?」
そうして長居したこの街をようやく後にすることになったのだった。
