第55章 涙
貧血も治まってきた頃、横になれと言う悟浄の言い分も聞かずに三蔵は雅に付きっきりだった。
コンコン
しかしそのノックに答えることもしないまま三蔵はただ眠る雅を見つめていた。するとそっと戸が開くと、悟空が入ってくる。
「…三蔵?」
「……悟空か…」
「ごめんな…三蔵」
「何で悟空が謝ってんだ」
「だって……俺…一番近くにあの時居たのに…」
グッとてを握り締めたまま悟空は俯いて話し出す。そんな悟空に対して三蔵は、雅から目を離すと悟空に向き合った。
「誰もお前の事責めてねえよ」
「…でも!!」
「悟空…」
「……」
「雅が怪我したのはお前のせいじゃねえよ…」
「…でも…ごめん…」
そういいながらその場を動けずにいた。ひとつため息を吐きながら三蔵は椅子から立ち上がり悟空の前にスッと立つ。
「あのなぁ。お前のせいだって言うなら、その前に俺の責任だろうが…」
「…なんで…三蔵…?」
「あの女の目的は、俺だった。だから雅がターゲットになった。それ以上でも以下でもねえ…だからお前が気にやむ必要はねえんだよ」
「……ッッ…」
「それでも気になるって言うなら、雅が目覚めた時にお前の分の飯を少し分けてやるんだな」
「…それじゃぁ…!」
「そうだろ、早く体力戻すにはそれが一番だろうが…」
「…うん…解った。八戒にも言ってくる…!」
そういって悟空はようやく顔をあげて部屋を後にしようとした。出る時に丁度、宿主に会った。