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凜恋心【最遊記】

第54章 あなたの愛で繋いで


♢ side三蔵・雅編 ♢

そうして三蔵と一緒に雅は昨夜と同様に部屋に戻っていく。部屋に戻ると電気を付けて、三蔵はどさりとベッドの縁に腰かけた。

「三蔵?何か飲む?」
「…要らん」
「そう?」
「……おい」
「え?」

そう雅を呼ぶ三蔵の表情は少し険しいようにも見えた。

「どうかした?」
「その言葉、そっくりお前に返すよ」
「…なんで?」
「あいつらの前で言えねえからって俺にまで隠し通すつもりか?」
「三蔵…?」
「何があった」
「…プ…クスクス…何言ってるの?何にもないよ…」
「…嘘吐くならもっとまともな嘘にしろ。みえみえなんだよ。」
「…ほんとになんでもない。」
「俺の目を見ろ」

三蔵は膝に腕を付きながらもじっと雅を見据えた。その視線から逃げることが出来ないことは誰よりも雅自身良く解っている。それでも精一杯の嘘を吐こうとしていた。

「ほんとに大丈夫。なんでもないよ、三蔵の考えすぎなだけ!」
「そんな能書き何ざ聞いてねえよ。」
「……」
「さっさと言え」
「……好き…なんだって…」
「は?」

俯きながら一旦切れた糸を結び直すのは不可能の様に雅は三蔵に話し始めた。

「自分のが三蔵に合ってる。三蔵なんて気安く呼ばないで、……良い気にならないでって……私に三蔵をちょうだいって……」
「…それで?」
「嫌だった。三蔵だけは渡せない……そう言ってもダメだった…」
「で、殴られたのか…」
「ちょっと…ひっぱたかれただけ…」
「バカだな…」
「そういうと思った。だから言いたくなかったのに…言い返せなかった自分に嫌気がさして…とことんいやな女だって自覚するしかなくなってる……三蔵に釣り合いたい…隣を歩いても似合う女性になりたい…そう思ってるのに……」

そこまで言うと雅はまっすぐに三蔵の目をみた。

「理由はどうであっても…三蔵に似合うのは自分だってはっきり言い切れる怜音さんに…三蔵は渡せないって…言えなかった…」
「……雅…」
「大丈夫…私なら…怜音さんにちょっとでも話して上げて…?」
「バカか、お前は」
「心配ないよ…」

きゅっと両手を握りしめ、背中を向けて扉に向かっていく雅に三蔵は声をかけた。
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