第54章 あなたの愛で繋いで
悟浄の言葉を聞き終わる前に雅は悟浄に巻き付いていた。
「どうしたもんかね……一体…」
「これは……」
泣いているわけでも無い…しかしきゅっと巻き付く雅を放ってなどおける訳も無かった。
「雅?」
「……ッッ…」
言葉にならない思いが止めどなく溢れていく。それを見た八戒は席をたった。
「悟空?悟浄がバカな真似起こさないように見ていてください?」
「解った!」
「お……おい」
「少し三蔵と話をしてきます。」
そう言い残して八戒は部屋を出た。
その頃の三蔵の部屋では、三蔵があからさまな不機嫌をまとっていた。
「言っておくが、俺は女には興味ねえんだよ。離れろ」
「…女性に興味無くても……私に興味抱いてくれたらそれでいい…です…」
「…チッ…離れろ」
「……傍に居てもいいって言ってくれるまで…離れたくない…」
「うるせえよ。女なんて必要ねぇ。退け。殺すぞ」
そう言われた言葉はとても冷たく、冷ややかなものだった。そんな会話の途中で八戒はノックをする。
「三蔵?入りますよ?」
「嫌だ…離れたくない」
「いい加減にしやがれ…退けって言ってんだろうが」
「三蔵?」
「…ッッ………あの…私…」
「あー、そう言うことですか…」
「私……諦めませんから…」
「出ていけ…」
そう言われた怜音は八戒に会釈をしてパタパタと三蔵の部屋を出ていった。
「……ハァ…嫌なところを見られたものですね」
「全くだ…」
「雅なら悟浄のところですよ?」
「…チッ…」
「三蔵?宿を変えますか?」
「恐らく変えたところであの女は追ってくるだろう…今さら面倒だ。それに、一つの街に宿屋なんて二つも三つもねえだろうが」
「それもそうですが……」
「雅あいつは?」
「ですから…悟浄と一緒です。安心してください?悟空も一緒にいてもらってますから」
「……ハァア…」
「抱き合ってる所を見られたのはイタイですね」
「抱き合ってねえよ。勝手に抱きつかれただけだ」
「そうかもしれませんが……」
「全く…面倒くせえ…」
そう呟いては腰をあげた三蔵。
「三蔵?どちらへ?」
「迎えに行くだけだ」
そういって部屋を後にした。