第38章 神と煩悩の狭間
それから約一ヶ月。なぜか行く先々の街や村では宿は取れても大部屋ばかり、それでないと野宿…という形になっていた。
「なぁ、なんか……最近三蔵超機嫌悪くねえか?」
「確かに…でも…なにかあったんでしょうか…」
「思い当たる節はねえんだよな…」
「同感です。」
「なぁ、三蔵?」
「うるせえ」
いつもと同じ返事なのにも関わらず、何故かひしひしと苛立ちが伝わってくる。
「なぁ、雅?」
「何?」
「なんか三蔵機嫌悪くない?」
「そうなんだよね…どうかしたのかな……」
「雅でもわかんねえとなると……」
「重症、ですね」
そう話していた。
そしてある日の夕方……今夜は野宿かと諦めかけていた時だ。一つの寺院が見えてきた。
「あ、あそこで一泊だけさせて貰えないのかな?」
「野宿よりかはましか…」
「三蔵、話してこいよ!!」
「なんで俺が…!」
しかし、無情にも八戒はジープを停めた。気付けば寺院の前についていたのだ。
「どうかされ……!!その格好は!!」
中から出てきた一人の坊主は三蔵の格好を見ると慌てた様子で寺院の中に入っていった。
「なんだ?」
皆同じ疑問を抱えていたとき、奥から少し年いった坊主が一緒に出てきた。
「これは、玄奘三蔵法師殿…ではないでしょうか…?」
「…第三十一代唐亜玄奘三蔵。旅の途中で今夜一晩宿を借りたいとここに立ち寄った。」
「これはこれは!!滅相もない!一晩と言わず一ヶ月…いや、一週間でも!!」
そんな会話を聞いていた三蔵以外の面々は改めて三蔵の偉大さを目の当たりにしていた。