第23章 揺れる心
「あぁもう!訳わかんねぇよ!!」
「……どうする、三蔵」
「どうもこうもねえよ…」
「三蔵?」
「んなシケた顔するな。あいつが決めたんだろうが」
「……本当にそうなんでしょうか…」
「ほう?」
「雅の耳に、黒いピアスが付いていました。夕飯に出る前までは付いていなかったはずです。」
「気付いてたか?」
「いや」
「それに、あれは雅の趣味、と言うには少し不格好です。」
「そんな事はどうでもいい。」
「どうでもいいって…三蔵」
「明日にはここを出る」
「……正気ですか?!」
「正気も何も、本来ならいないはずだろうが」
「今では掛け替え無いですよ?」
「…知るか」
そう呟いた三蔵。誰よりも納得はしていなかった。それでも何があったのか、知りたくとも帰ってくるのを拒んでいる以上どうにもならない。
「……さっさと寝ろ」
「三蔵!」
「出ていけ」
そう言って悟浄と悟空を払う。しかし八戒はその場に残った。
「出ていけと言っているのが聞こえなかったか」
「いいえ?聞こえています。」
「だったら…とっとと出ていけ」
「後悔、しますよ?」
「…うるせえ」
「雅が戻るまで、ここにいませんか?」
「却下」
「……三蔵…」
「お前が居たんだろう?それでもあいつは来なかった。だとしたら、これがあいつの答えなんだろう?」
空を見上げる三蔵。しかし月は雲に隠れ、明るさなんて何処にもなかった。
その頃の吠登城…紅孩児が『誰か』を連れてきたと言うことはすぐに独角兕や八百鼡の耳に入った。
「紅、一体……!!」
「独角…八百鼡は?」
「ここに」
「ちょうどいい、こいつに服、ひとつ見繕ってやってくれ」
「え……紅孩児様?」
「玉面公主には黙っていてくれ」
「それはいいが……どうしたんだ…一体。」
「ちょっと…な」
そう言いながらも八百鼡に雅を託した紅孩児。独角兕と二人になると、色々と聞かれていた。