第23章 揺れる心
教えてもらった大木までは少し時間がかかった。それでも傘を差さずに八戒はただ急いだ。
「雅…何があったんですか…」
そう呟きながらもとにかくその元へと急ぎ足になっていく。
「……!!雅!」
その姿を捉えた時に、一緒にいた紅孩児を見つけて八戒は一瞬足が止まった。
「何、しているんですか?」
「…何がだ」
「雅を返していただきます」
「返すも何も、こいつが帰らないだけだ」
「……どう言うことですか?」
少し俯き加減に雅は紅孩児の後ろに隠れてしまう。
「……雅?」
「おい、どうするんだ」
「……ッッ」
しかし紅孩児の後ろから動けないでいる雅をみて八戒は困惑している。
「雅、帰りましょう?」
「……フルル…」
首を小さく横に振る雅をみて八戒は困り顔になる。
「紅孩児さん?」
「なんだ」
「……僕は一旦帰ります」
「……」
そう言うなり八戒はにこりと雅に笑いかけて背中を向けた。雅の耳元に見慣れないピアスがはまっていることにも気づいていたが、今の自分ではどうにもできないと悟ったのだった。
「おい、どうするんだ」
「……」
「取り敢えず、名前だ。俺は紅孩児。お前は…?」
「…雅」
「雅、か」