第23章 揺れる心
「おい」
「……大丈夫ですから」
そういいながらも缶を開けごくりと飲み込んだ。小さな缶だとはいえ、突然言われた別れで、からからになった喉を潤すにはちょうど良かった。
「……私…」
「三蔵一行の事なら気にすることは無いだろう」
「あなたには関係ない!!」
そういって腕をつかもうとした紅孩児の腕を振り払うと同時にバチっと雅の力が暴走を起こした。ビリッと来る感覚に紅孩児は一瞬驚いたもののフッと目を細めた。
「なるほどな、それで傍に置いているのか」
「……」
「妖気は感じない。術師でもない、どんな力かは解らないが……何かあるな…」
「……ッッ放っておいて……」
「そうは行かない。」
そう言われた直後だ。雅はグラリと視界が揺らぐのを感じた。しかしすぐに収まる。力の使い方を間違えたせいか…そう思って気にも止めなかった。
「おい…」
「……いい加減にして…」
「三蔵一行には力のみでしか必要とされていないのか?」
「…そんなこと…そうだよ…そんなこと無い…」
「だったら何で泣いている」
「……何か理由があるのかも知れない…」
「よく解らんが、その理由とやらをあいつらに聞けるのか?」
「……」
「あいつらはよく言っている。自分達が良ければそれでいいと。」
雅が何を飲んだかを知らない紅孩児は悪気もないかの様に以前に聞いていた事をそのまま話している。それは昼間に李厘に聞いていたのと酷似していた。しかし、昼間と明らかに違う感覚に襲われた。頭の中に嫌に木霊するかの様に響いて取れなかった。
「……でも…」
「三蔵一行に居られると少し厄介だな…」
ポツリと呟いた紅孩児。耳の奥にこびりついて取れない『負』の言葉。
「もう……いやだ…」
そう呟いた時だ。右の耳に黒のピアスのようなものが付いた。
「……もう…やだ…」
「おい…」