第17章 剥き出しの感情
その声は低く、それ以上八戒も言えなかった。同時に悟浄もまた、三蔵に何の言い訳もできなかった。
「何したかって聞いてんだよ…!」
「…別に…?」
その悟浄の回答は、一気に三蔵の怒りに火をつけた。見ている間に悟浄はふっ飛ばされた。
「三蔵!」
そう声をかけた八戒の声も三蔵には届いていなかった。床に座り込んだ悟浄の前に同じように膝を付き、胸ぐらを再度掴みかかる三蔵の目は、いつになく悟浄の姿をはっきりととらえていた。
「別にって言うならあんなに怯えてねぇだろうが…」
「…クク…」
「何がおかしいんだ」
「これだよ…」
そういうとそのまま思いきり肩を押して、三蔵を床に倒した。
「…貴様…俺は先に忠告したはずだ…」
「だからなんだよ…」
「もう一度聞く、何しやがった…」
「言っても言わなくても殺す勢いじゃねぇか」
その返事を聞いて三蔵は思いっきり悟浄の腹を蹴り、自身も立ち上がった。
「良い度胸じゃねぇか…」
「三蔵!」
「うるせぇ」
「何なんだよ!二人とも、意味わかんねぇだろ?」
「猿は黙ってろ。」
「返事は待ったぞ…」
言うが早いか三蔵は殴りかかる。思いっきり悟浄の頬に当たるもふらめくだけで倒れはしない。しかしそのまま殴り合いの喧嘩になってしまった三蔵と悟浄。
「ちょっと…」
「雅、あぁなったら止まりませんよ…」
「でも…八戒…私…」
「あなたは悪くありません。悟浄から話は聞きました。あの様子じゃぁあなたから三蔵に話はしていない様でしたが…」
「……言えないよ…それよりも!」
そういうと二人のもとに歩もうとした時だ。八戒に止められた。