第11章 似たものなんかじゃ物足りない
私は服屋に行った。
別になんともないどこにでもある服屋である。馴染みのある言葉で言えばチェーン店だろう。
「…これはあったかそう」
衣替えで去年の服が着れなくなったため買いに来たのだ。ジャケットも同様に着れなくなっていた。
その中で一つ目を引くものがあった。どこかで見覚えのあるデザイン。まったく同じという訳でもないけど、言われてみたら気づくというか…
「誰だっけな…」
所詮中学のときの知人か誰かだろうと思いすぐ手に取った。このときもっと考えたら良かったのかもしれない。
「あ、あれイヴァン君のか…!!」
やっちまったと声に出したかったが聞かれて面倒になることは言わない。うん。良いことだね
「僕何か落としちゃった?」
私は高校生、高校生…これくらいではびびらないぞ…しかもイヴァン君は憧れなんだから怖がる必要なかった!!
「ちがうよ!え、えーっとなんと言いますか」
怖がらないと言っても言っていいのか分からない。言ったら
"僕君とお揃いなの?やだなぁ"
とか絶対言われると思う。てか言われたことしかない。ま、当たって砕けろか…
「服屋言ったらイヴァン君が着てるのにそっくりなのあって…あ、でもその時気付かなくて買っちゃった!ごめんね!」
少し語彙が足りなすぎたかと目をつぶっているとそんなに強い声は返ってこなかった。
「ふふ、君面白いね。似たのじゃなくて僕のあげようか?」
お、面白いねって大丈夫なほうだよね、嫌われてないよね?!
…っていうかイヴァン君の普段着てるの貰えるの?ちょっとそれは複雑かも…
「え、えーっと…それは大丈夫かな?」
「君は似たような物で満足しちゃうんだね」
これは逆に嫌われてしまった?イヴァン君から見てジャケットをあげるのはマイナスなはず…マイナスを嫌がるじゃなくてプラスを嫌がるってこと?
「君は僕のを着るべきだと思うよだって僕君のこと好きだし。好きな人には自分のもの着てもらいたいっていうのは普通じゃないかな?」