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幻想科学物語-つかの間の閑話-

第3章 魔導士からのプレゼント






朝晩が涼しくなり、今年も少しずつ葉っぱが色づき始めた頃だった。


ルーチェは診療所で作業する傍ら、ふと壁にかけられた乱雑に数字が並んだカレンダーを見る。


過ぎた曜日にばってんをつけられているため、今日が何日かはすぐにわかった。


ルーチェはカレンダーを見つめ、顎に手を付き、思考をめぐらす。


(うーん、と、今日は9月2日。もうすぐなにかがあったような…)


風の音だけがそよそよ優しくなるなか、ルーチェはじっと考える。
しかし、聞き覚えのある可愛らしい音によって、その思考から離れた。


足跡は段々と近づき、入口でピタッととまった。


「ルーチェ、お昼の時間なんだよ。」


代わりに、幼い少女の可愛らしい声が聞こえた。
ルーチェが声に反応して入口を見ると、そこにはスイカが立っていた。


「スイカ、ありがとう。今行くね。」


スイカに呼ばれ、入口の方へと歩いていく。
最近のルーチェはほんの少しだけ感情を顔を出すようになった。


今も少し微笑み、声には優しさが滲み出ていた。


「いきましょうか。」


「うん!」


声をかけ、手を差し出すルーチェ。スイカは元気よく返事し、ルーチェの手にそっと自分の手を繋いだ。


その瞬間だった。ルーチェの中になにかが流れるような感覚に襲われ、あっ、と声を出す。


「どうしたんだよ?」


「あ、ううん、なんでもない。」


不思議そうに尋ねるスイカに、ルーチェはすぐに平静を取り戻し、なんでもない事を伝えると、ゆっくりと歩みを進めた。

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