第1章 前日譚1:コラさんとはじめまして
《AnotherStory》闇夜の太陽:前日譚1
1(1/1)/5P┃ドリノベ版01/09P┃0500字
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(………い、いた)
お目当ての人物を見つけた私の心臓は、うるさいくらいにバックンバックンと音を立てて緊張している。
「見ろ、こりゃでかい病院だ。きっと治るぞ!」
「おい!!イヤだ、病院は!!!」
視線の先にいる大きな男は少年を軽々と手に持って病院へ連れて行こうとしていた。
その彼こそが私がずっと恋い焦がれていて今まさに探していた人物。
彼らがいる所から死角になる曲がり角の冷たい建物に背中をぴったり付けて騒がしい胸を押さえても、彼の人ををチラッと視界に入れるだけで呼吸すら苦しくなっていく。
(ど、ど、どうしよう…………)
私の人生を掛けた───無謀とも言える計画の成功率上昇のためには、今ここで会っておかないといけない。だけれど、こんな状態なのではかえって怪しさが満載で不振人物。
(まさか……見るだけで…こんなに動揺するなんて思いっきり計算外だ)
「っ………コラ………さん…」
噛みしめながらうつむいて、名前をつぶやけば泣きたくなる衝動に駆られる。
(今日はだめだ、また明日…………)
話し掛けるのをあきらめた私は彼らを見失わないように尾行だけしていた。病院に行って怒りながら帰って来ている一連の流れ。
知っている彼となんら変わりない姿を見つめた時に、ただただ涙が溢れた。