第3章 桃鳥【あなたに全てを】
どんなことでもお役に立ちたかった私は『性欲処理の相手』に立候補している。もちろん、ベビーちゃんやドーラさん達みたいに『責任取って』なんて言わない。
(私は若様が、私の前で『無防備な瞬間』をしてくれるのがたまらなく嬉しいの…)
チュッ
「フフフフフ」
なにも着けないで全裸で寝ている若様の頬にキスをすると『寝たフリ』だった彼に手を引かれた。
【叶えることのない、想い】
こんなに………どうしようもないくらいに惚れているのは、伝えるつもりもない。
色んなことに聡い人だから、私が秘めてる気持ちの種類や度合いは分かっていると思う。
でも……彼を取り巻く闇はとても深い。
私ごときでは『彼を幸せにする』なんて畏れ多いことなのだ。
(だから、少しの『安心』と『安らぎ』を与えられる存在で十分)
「お前は………いくら助けられたからって、おれに都合のイイ女過ぎるよな。トレーボルやラオG達が羨ましがってたぜ」
「ベビーちゃんに迷惑かかったら申し訳ないのですが、私は若様にだけですからね!」
「そういう所も昔から変わんねェよな」
「当然です。若様が望むのでしたら、別の男と関係を持つのも、人前で全裸になるのも、人を嵌めたり、知り合いを殺害だってできますが、若様はそんなことは全く言ってこなかったじゃないですか」
「ドリーム、そんなことをクチにすんじゃねェよ」
「『若様の指示のフリ』をする人がいるかも知れないからですか?どんなことだって若様に直接言われなきゃ、実行しませんよ」
「偽物の可能性もあるだろうが?」
「間違えますかねぇ………私が若様を。ですがそれを〈若様〉だと思ったんなら、それでもイイです」
「分かった………こいつはベビーとは違う危うさを持った奴なんだよなぁ」
「ふふふ、[恋は盲目]ですから」
(気兼ねなくサングラスを外せる空間をこの人に提供したいの、私は……)
夢は『若様を庇って死ぬこと』だと言ったら笑われてしまう。
私の生涯、たった一人のヒト。
《Fin》
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執筆日〔2024,07,23〕
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