第1章 娼館から後宮へ
「この方はやんごとなきお方···この度はありがとうございました。深く感謝申し上げます」
「とんでもございません」
高順は幼いながらも堅実なの姿に強い感銘を受けた。
見た目や背格好からして壬氏と同い年くらいの女の子だろうに。
余程厳しい躾を施されたのか···。
「さ、壬氏様、参りましょう」
「もう?···また、会える?」
「なりません」
ここは花街であり、はやがて妓女となる身である事は高順は察していた。
将来皇帝になるかもしれないお方と、妓女とでは身分が違い過ぎる···。
ほんのり数刻で仲良くなったのだろう事を思えば、高順は申し訳無さを覚えたが、これは主君の為だ。
「···、」
ポンと、壬氏の背中を押して足を進め始めた高順に、壬氏は寂しそうに振り返った。
(もう、···会えないんだ)
も些か寂しさを感じて、笑みを浮かべてひらひらとゆっくりと腕を振った。
の腕には、薄い紅色の薔薇のような痣が浮かんでいるのを、壬氏はしっかりとその目に撮していた。