第2章 初恋の人
いくら包帯で痣を隠そうとも、無理がある事は分かりきっていた。
はしゅるしゅると包帯を取り、壬氏がいる宮へと向かった。
壬氏がどんな人物かは、噂で聞く程度で知る由もない。
同僚に壬氏について尋ねれば、頬を赤くして彼がどんな麗人なのかを力説された後、も気になるのかと興味本位と期待に満ちた目で問いかけられた次第で、訳のわからぬ人物像のまま壬氏の部屋へ訪れる羽目になってしまった。
どうしよう。
緊張と不安で胸に手を当てた。
いっそこのまま帰ってしまおうか···壬氏の部屋の前に来た所で、突如として背後から声を掛けられてビクリと肩を跳ねさせた。
「壬氏様の仰っていた女官とは、あなたの事でいいのかしら?」
の背後に立っていたのは水蓮だった。
「ひゃい!?」
「あらあら、そう固くならないで。もう一度聞くわ。明日から壬氏様付きの女官になるで良いのよね?」
(明日から、壬氏様付の···女官!?)
壬氏の侍女である水蓮の発言に、は酷く困惑した。
全てが初見であると同時に、名前までもう知られてしまっていては···。