第9章 いぇ~い、王太子殿下見ってる~?
―――私は最後の仕上げに取り掛かる事にした。
図書室の禁帯出書庫の更に奥、古い本が安置された誰も来ない部屋―――。
そこにユーリアを呼び出す。
「ごきげんよう、リンドバリ男爵令嬢」
言えば、キッと鋭い目をするユーリア。
「エドヴィンやステファンに何をしたのっ?!」
二人の不調にもう気が付いてしまったらしい。
流石ヒロイン―――。ヒロインチートとかあるのかしら?
「あら、何故私に聞くのかしら」
言えばユーリアは私の目前にやって来る。
「貴女以外誰がやるっていうの?」
顔をぐっと近付けてくるユーリア。
「お黙りなさい」
私はその頬を思い切り張り倒した。
ユーリアがしゃがみ、頬を押さえて私を視る。
「ピーピーと囀って……その声でマクシミリアン殿下を誑かしたのね」
尻もちを付くユーリアの体を横蹴りにした。
ユーリアが倒れる。
「な、な、な、っ」
ユーリアが倒れ伏したまま身体を震わせる。
そう、先日までの私だったら暴力なんて低俗なモノを用いなかっただろう。
でも今は急を要するのだ。
壁際に這って行くユーリアの横、髪を巻き込み私は足で壁ドンした。
「痛い目みたい?それとも気持ち良くなりたい?」
「き、気持ち良く?」
私は足でユーリアの髪を引っ張る。
「い、痛いっ」
「早く答えなさい。私が質問しているのよ?」
鳩尾を軽く蹴った。
「ひぃぃっ」
今度は正面から腹を踏み付ける。
「答えは?」
「いやぁいやぁぁぁ」
その悲鳴はどちらも、と取らせて頂くわ。
私は鞄から出てきた手錠、口輪、縄を手で弄ぶ。
「わたくしの美技に酔いなさい」
暴れるユーリアを抑え込み手錠を付けながら私はそう囁いた。