第9章 いぇ~い、王太子殿下見ってる~?
待て待て待て、冷静に状況を分析しよう。
私は、『』―――。
男装執事喫茶で働いていた。
だけど色恋本営鬼枕した客に、
『どうしてアタシだけじゃだめなのっ?!こんなに苦しいならあなたを好きにならなきゃ良かった!!』
って、後ろから刺されて―――。
あ、そうか、多分そのまま死んだんだ。
そして今、私は『シルヴィア・ボレリウス』として生きている。
そして、私は明後日のプロムで断罪されるのだ―――。
私の婚約者はこの国の第一王子、『マクシミリアン・エクホルム』様。
幾多の令嬢の中から私が選ばれた時は誇らしかった。
嬉しかった。私が生きてきた意味、とさえ思った―――。
それが二年前―――今、マクシミリアン王太子殿下の心は私には無い。
庶子で母が亡くなった事で父の『リンドバリ男爵家』に引き取られたこの学園の一年生―――『ユーリア』に殿下の心は奪われる。
優しい殿下は家で余り良い扱いをされていない様子のユーリアが気になったらしかった。
そうして気にかけている内に二人の距離は縮まり……。
私はそれが許せなかった、―――何度か『殿下のお手を煩わせないで』と話したけれど『でも殿下から私を気にかけて下さるんです』という暖簾に腕押しな言葉に私は実力行使に出る。
周りの生徒を抱き込んで彼女を追い詰めた―――。
それが更にマクシミリアン様とユーリアの仲を深めさせてしまうとも知らず。
そして―――王太子殿下は決断した。
正式な声明では無い。でも、次のプロムで私と婚約破棄をして、『ユーリア・リンドバリ』と改めて婚約すると内示が届いた時の衝撃たるや―――。