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【短編集】悪役令嬢RTA

第8章 番外編・拝啓、サンドラお嬢様


「サンドラ、お前もそろそろ後悔しているのだろう?」
旦那様、……。

「旦那様は……お口が臭いです。恰幅が良いから鼻孔が塞がっていて口呼吸をなさっているので、口腔が乾く所為でしょう。服は葉巻臭いし、お仕事の話しかしないし、鼾が煩いです」
……でもそんな旦那様を私、愛してしまっているの。

最初はお金、次にはおじさんだから、でも最後は違う。
旦那様は一生懸命私に愛を示してくれたから。
私に今は夢中だからかもしれない。
後何ヶ月かしたら飽きて他に行ってしまうのかもしれない。

それでも私、旦那様を愛してしまったの。
「私、そんな旦那様がだいす」

「分かっている。後悔しているだろうとも。聞くまでもない。
こんなじじいに子作りをせがむのは若くて美しく端くれとはいえ爵位を持った娘がやるのは耐え難いだろう」
旦那様は項垂れる。

「最初はラルセン家に意地の悪い女だからいい様にいびってやれと言われたが、サンドラ、お前はまるで聖母の様ではないか。淑やかで美しく、慎ましく、私を盛り立て、床では愛らしく口吸いをねだるお前に年甲斐もなく踊らされ……私は、サンドラ、君に恋をしてしまった」
―――エリオット様がそんな事を……。
いや、今はそれ所じゃないわ。

「ワシの金を好きなだけ食い潰すと良い。それが尽きるまではお前はワシの傍に居てくれるのだろう?何なら若い燕でも作るが良いさ」

あんまりな言葉にもう黙ってはいられない。
「嫌ですわ!!嫌ったら嫌ですわ!!お金が尽きるまで?!お金が尽きてしまってもこのサンドラ、旦那様について行きますわ。そこが地獄の業火の中でも……サンドラは旦那様と共に在りますわよ。だって婚姻式でそう誓ったじゃ御座いませんの」
「サンドラ……」
側に行って旦那様を抱き締めた。

「旦那様こそそろそろ私に飽きてしまわれたんじゃありませんこと?」
―――そうだって言われたら泣いちゃう。
そしたら旦那様は少しは同情して下さるのかしら。

「言っただろう、サンドラ、ワシはお前に恋してしまった、と」
「旦那様!!……だぁい好きよ」
「良かったら、……その、『ニコライ』と、二人きりの時は呼んでくれないか……」
「……?!……ニコライ」
「サンドラ」

―――私は旦那様、ううん、ニコライと手を取り合い、唇を重ねる。それはとっても温かくて。私は改めてニコライに惚れてしまったのだ。
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