第7章 とりかへばや物語り
そう、でもそんな屈託の無さが、エリオット様の心を掴んでしまったのだ。
そして―――さる筋から密告があった。
『エリオット様とハンナが本格的に『私』、サンドラを糾弾しようとしている』―――と。
私だって貴族令嬢―――事の真偽を確かめたわ。
そして裏が取れてしまったのよ。
私は誕生会で婚約者に糾弾され大恥をかかされるという烙印を押され―――それを理由に婚約破棄をする魂胆らしい。
もう明日じゃない、と、私は頭痛がして椅子に掛け―――、
『私』と、
『私』サンドラ・ティッキネン
が混じり合う。
まあ線路突入スーサイドは置いておいて、よ。
明日よ。
父が私が生まれる前から、昔とった杵柄で取り付けた公爵家令息との婚約を破棄される。
私に残るのは自分より下級の令嬢をイジメ倒し自分の誕生会でそれを暴露され、大恥をかくという事実。
そんな令嬢とお近付きになりたい人なんかいない。
私でも良いなんて言ってくれるのは……うぅ、考えただけで体が震えるわ。
百歩譲って婚約破棄はまあ分かるわ。
でもよりにもよって私の誕生会の日にやる事は無いじゃない。
部屋には明日着る贅の限りを尽くしたドレスに親類達から早々と贈られた髪飾りだの扇だの手袋だのの小物の箱が積み上がっている。