第10章 距離感
「ねぇねぇドクター、お腹空いた!」
「ねぇねぇドクター! 一緒に遊んで!」
どういうことなのか、執務室には子どもの患者たちが遊びに来ていた。
「君たち、どこから来たんだい? ハイビスカスやガヴィルが探してると思うよ?」
この子たちは本来、治療室にいるはずの鉱石病患者たちのはずだ。改めて見ると子どももこんなに沢山鉱石病に罹っているのかと思うと心が痛むものだが、当の本人たちは気にもせず執務室をウロウロとしたり勝手に引き出しを開けたりしている。
「そこにいる子どもたちは一体何を……って、ちょっとちょっと!」
複数名の子どもたちが大人しいと思っていたら、執務室にある冷蔵庫の中身を漁って何かを食べていたのだ。クリームだらけだ。この冷蔵庫に、そんな食べ物は仕舞っていただろうか?
「ドクター、すみません! 治療室にいた子どもたちがどこかに逃げ出しちゃって……ってあれ?」
間もなく、慌てた様子で駆け込んできたハイビスカスに子どもたちを発見され、彼らは無事に治療室へ戻って行ったのだが。
(……これはマズイ)
私は一人、冷蔵庫で子どもたちが食べちゃったものを見て冷や汗をかいていた。