第1章 悪霊がいっぱい!?
誰があたしの名前を呼んだのだろうか。
そう思って振り返れば、そこにはなんとぼーさんの姿があったのだ。
「ぼーさん!?」
「おっ、やっぱり結衣じゃん。まっさか、お嬢ちゃんにここで会うとは思ってなかったな。元気だったかー?」
相変わらずのお坊さんならぬ格好のぼーさん。
彼は眩しいと思えるほどの愛想のいい笑顔を浮かべており、大きな手であたしの頭をかき乱す。
「う、うん。元気だったよ。ぼーさんはなんでここにいるの?」
「うーん?ちょっと遊びに。そういう嬢ちゃんは?」
「買い物」
「今日は双子の妹はいないんだ。麻衣は」
「うん……あたしだけ」
まさか再会するなんて思っていなかったせいか、かなり動揺してしまっている。
嬉しいという気持ちが大きくなっていて、どうにかなりそうな気がしてきた。
そんなあたしの気持ちは露知らず、ぼーさんは『人が多いなぁ』と呑気な事を言っている。
「そんじゃ、おれはもう行くけど。人が多いから気をつけて帰るんだぞ、嬢ちゃん」
「う、うん」
「じゃ、また会ったら飯でもいこーぜ。じゃあな」
そう言うと、すれ違いざまにぼーさんはあたしの頭を撫でてから行ってしまった。
(やっぱり、なんだかんだ優しい……)
初恋相手に、一目惚れな相手にまた会えたなんて、あたしは今日は運がついているのかもしれない。
「また、会えたらいいな……」
ー『悪霊がいっぱい!?』完ー