第10章 悪夢の棲む家
「……例の電話かな」
「麻衣、電話を取れ」
「えっ、あ、はい!」
ナルの指示により麻衣は慌てて居間へと向かう。
「リン。電話の音声をスピーカーに」
結衣はナルとリンと共に居間の映像が流れるモニターを覗き込む。
居間のソファでは広田が眠っていたのだが、彼は電話の音で目が覚めたようで眉を寄せて固定電話の方へと視線を向けている。
しばらくすれば麻衣が来た。
慌てた様子で鳴り響く電話へと手を伸ばしてから、電話を取った。
「……もしもし?」
電話の向こう側からは雑音のような、ノイズの音が聞こえてくるだけだ。
「あのーどちらさまですか?」
「録音しているか?」
「回線接続と同時に録音を開始しています」
「もしもし、あのですねよく聞こえないんですが。もしもーし」
ノイズが酷くて向こう側の声が聞こえない。
麻衣はそれに眉を寄せた。
「も」
再度『もしもし』と言おうとすると、電話が切れてしまった。
その事に麻衣が苛立った様子を見せていて、結衣は苦笑を浮かべてしまう。
「雑音をカットして相手の声だけ抽出できるか?」
「やります」
「電話がかかったら無条件に録音するようにする。深夜はこちらで取れるように切り替えろ」
「はい」
電話を置いた麻衣は溜息を吐き出す。
そんな彼女に広田が声をかけた。
「……あの電話か?」
「そうです。起こしちゃってすみません。まだ夜中ですから寝ててくださいね」
そろそろと麻衣が出ていき、広田はそんな彼女を見届けながら腕を少しかいて再び眠りについた。
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Day.2
「それじゃ、いってきます」
「いってらっしゃい」
翠は会社に出勤する為、朝になると家を出た。
そんな彼女を阿川夫人と広田、そして双子が玄関で見送りながら結衣はチラリと阿川夫人を見る。
昨日と違って笑みを浮かべている阿川夫人。
少しだけではあるが元気になっているのかなと安堵した。
「なんか、お母さん少し元気になったみたいでよかった」
「笑顔も浮かべてたしね」
「そうだな」
双子と広田はベースへと戻る。
「そういえば、ゆうべあのあとまた電話はあったのか?」
「ええ。四回ほど」