第9章 忘れられた子どもたち
「でも、壁を通り抜ける霊っているよね」
「います。壁を通り抜ける霊ならこんなものは簡単に超えてくるでしょうが、だとしたら塞いでしまっても同じです」
「そっか」
「二階にもドアがあったといってましたね。そこにも影壁を立てて封じていたほうがいいでしょう」
影壁を立て終えたあたし達は玄関に集まる。
その辺の木材を材料にして、火を起こしてからそれを囲むように座っていた。
火があると少しだけ落ち着く。
暗闇というのはやっぱり怖いし、明るい所があれば恐怖心は少しだけだけど和らぐものだ。
「結衣、麻衣。なにか飲む?カップどれだっけ」
「カエルの。甘いのがいいな」
「あたしは羊。ウーロン茶がいい」
綾子に手渡されたコップを受け取り、ゆっくりとウーロン茶を飲んでいく。
飲み終えてから息を吐き出してから火を見つめた。
「……ねえ、ナル」
麻衣が何やら考え事をしているナルに声をかけた。
「一階に教室が七つもあるでしょ。生徒が二十人ぐらいだったけ?そうすると教室の数が多すぎるよね。なんに使ってたんだろ」
「──一番奥の二つがぶち抜きで元職員室だな。そこを教室に使ってたらしい。隣が元保健室で、教師が控え室に使っていたようだ。奥から四番目の部屋は元は家庭科室で、小鳥やなんかの動物を飼っていた。残り三教室は元理科室と図画工作室、音楽室だったらしいが当時は使われていない。元々はもう少し大きな建物だったのを1部を取り壊してプールを作ったらしいな」
「学区の広さは?」
綾子が聞くと、ナルは呆れたようにしていた。
「……全くミーティングの話を聞いていらっしゃらなかったわけですね。この周囲八集落、このうち三集落はすでにない。ただし二集落はダムの底だ」
「田舎の過疎化ってほんとに酷いのね」
そういえば……と思い出す。
ダム湖の作業はどうなっているんだろうと思いながら、綾子にウーロン茶のおかわりをお願いする。
(たぶん、この雨だと中止されてるよね……)
寒い。
そう感じながら火に手を当てる。
雨で濡れたせいで体温が奪われているらしい。
「まあ、なんにしてもどんな目的でアタシたちを閉じ込めたのかってのが問題だわね。あんまり無事に出してもらえそうになしい」
「うん……そういえば、ぼーさんたち遅いね」
「確かに……」