第8章 呪いの家
なんだか綾子がとても凄いと思ってしまった。
関心したように麻衣と共に『はぁ……』と声が漏れる。
「じゃあ、これでカタがついたんだね」
「まだよ」
「「「はあ!?」」」
さらりと言ってのけた綾子に驚きの声が上がる。
これで終わりだと思っていた、これで解決できたと思っていたのにそうではないらしい。
「『霊なら』って言ったでしょ。霊じゃないものがいるわよ、ここには」
「……なんだって?」
「さっき、どうしても近づいてこない力があったのよ。霊なら浄化を求めてくるはずだがら、あれは霊じゃない。なんだかは知らないけど、もっと大きな力だわね。それが連中を式として使役してたんだと思うわよ」
「六部の霊じゃなく……か?」
「違うわね。六部の三人もたんなる式だと思う。真砂子も霊場だって言ってたじゃない。霊がうようよ集まるなんて、そこに特別な力があるからでしょ?奈央さんの霊だって『化け物』って言ってたし」
綾子の言葉にある一つのものが浮かびあがる。
「だとすると……その力ってえのは一つしかない」
「……『おこぶさま』ですね」
「海から流れ着いた流木。形が仏像に似ているから祠を建ててこれを祀る。『えびす』だ。堂々たる『マレビト』だよ。──どうやら、おれたちは神サンを相手にしなきゃならんらしいぜ」
神様を相手にする。
霊なんかよりもっと難しそうだと思いながら、あたしたはベースへと戻っていく。
道中『着替えなきゃね』なんて話しながら、血があちこち付着している服を見る。
(これ、洗濯したら落ちるかなあ……)
血のシミというのは頑固だ。
しかも破れている箇所もあるし……と思いながらベースに到着した。
ぼーさんが障子を開けたのだが、何故か立ち止まる。
「うーっす、ただい──……よう。ひさしぶりだな」
「ぼーさん、急に立ち止まらないで……って!」
「──ナル!」
ベースの中をぼーさんの背中から覗くとナルがいた。
久しぶりにみる起きている姿に驚いていたが、そういえば綾子が除霊したんだと思い出す。
(ナルに憑いていた霊も浄化されたんだよね……)
喜ぶべきことだ。
そう思いながらベースに入り、ジョンが声をかけた。
「ああ、渋谷さん。無事でよろしおしました」