第8章 呪いの家
二人はゆっくりとお風呂に浸かった。
普段ならナルに怒られるところだが、ナルは今は眠っている状態。
「ゆっくりしちゃったねぇ」
「だねぇ」
二人は廊下を歩きながらベースへと向かう。
すると廊下の向こうから法生の声が聞こえ、二人は顔を見合せてから覗いた。
法生は固定電話で誰と話している。
誰だろうと双子は耳を傾けた。
「──ちょっと難儀なことになってな、手を貸してもらいたいんだ。──明日?今日の便があるだろう。とにかく一刻も早く着いてほしいんだ。何がなんでも今日の飛行機に乗れ」
なんとも横着な物言い。
頼み事をしているのか脅しているのか分からない法生の言葉に双子は首を傾げる。
「もしかして……」
ベースの前に辿り着いた時、結衣は一人の青年の姿を思い浮かべた。
そんな時、慌ただしい足音が聞こえてきて振り返ると彰文の姿があった。
「彰文さん?」
「どうし──」
「大変です、兄が──!」
その言葉に双子と丁度居合わせた法生が母屋へと向かう。
そこに広がっていた光景に三人は唖然としてしまった。
「靖高さ──」
布団に靖高が血まみれで倒れていた。
両手首を切りつけたのか、両手からは血が溢れ出していて布団を赤く染めている。
そんな光景に双子が息を飲んでいれば、法生が勢いよく中に入ってから靖高の口元に耳を当てる。
微かにだが息をしているのが聞こえた。
「若旦那、救急車は?」
「呼びました!」
法生は靖高の腕に包帯を巻いて止血を始める。
「──ねえねえ、お姉さんたち」
ふと、後ろで声が聞こえた。
慌てて双子が振り返れば、そこには和歌子と克己の姿があった。
結衣は直ぐに襖を閉めた。
「な、なに?」
「どうしたの、和歌子ちゃんたち」
「靖おじちゃんしんだ?」
「え……?」
「ねえ、しんだ?」
二人の言葉は何処か楽しみにしているかのように、とんでもない事を聞いてきた。
そんな子供の光景に双子は引き攣った笑みを浮かべながら、『え……?』と聞き返す。
その反応に子供たちは面白くなさそうにした。
「まだ、生きてるんだ」
「なあんだ」
残念そうな言葉に双子は目を見張る。
そして靖高は救急車により急いで近くの病院に運ばれたのだった。