第8章 呪いの家
「そしてナルと共に逃げるが、何故か神社に行く。そこで麻衣は何故『海じゃないの』と思った。そして数人の人に追いかけられていて、そこであたし以外のぼーさんたちとかのメンバーがいた。数人の人達に包囲されていて、そこに栄次郎さんもいた。そして刀を振り下ろされる前に声が聞こえた。『必ず、必ず末世まで呪ってやる』と」
結衣が声に出して喋る度に麻衣は恥ずかしそうにしていた。
「なんちゅー夢見てんのよ」
「いやあ……あはは」
「でも、なんで夢の中でナルが彰文さんを?しかも手紙をすり替えられていてとか……その内容がわかんないなあ。逃げ出した時に海にってこともわかんない。それに『末世まで呪ってやる』っていうのも……」
双子は揃って悩み唸る。
そんな時、先にベースに向かっていた綾子が戻ってきて部屋を出るように促した。
「もう真砂子とジョンが来てるわよ」
「早かったね」
「朝イチで来たみたいだからね」
ベースに入れば、真砂子とジョンの姿。
二人はナルが居ないことを気にかけていて、そんな彼らに結衣たちはナルの状況を説明した。
真砂子は悲痛な表情を浮かべる。
それもそうだ……思いを寄せている相手が憑依されているなんて、考えてもいないことだ。
「──……まさか、渋谷さんがそんなエラいことになってはるとは……」
「……ナルはいま、どうしてるんですの?」
「寝てるよ」
「リンさんがね、確か……禁呪とかいうのをかけて目を覚まさないようにしてるの」
「会えます?」
「顔を見るだけでしたら。けして部屋には入らないでください」
リンがベースとして使用されている部屋の奥の部屋の襖を開けた。
中央にはナルが布団の上に寝かされていて、その四方を呪符が木の枝で畳に刺されている。
真砂子はそんなナルを見て悲鳴をあげそうな表情を浮かべ、咄嗟に口を手で押えていた。
「……ね、どういう霊が憑いてるかわかる?」
麻衣の問に真砂子は首を横に振った。
「……よく──見えません。霊が憑いているのは感じるのですけど、空虚な霊と呼ぶべきですかしら」
「どういうことですか」
「無色透明で……なんの感情も放射していないんですの。なのにとても存在感が強い──ひょっとしたら霊の正体を掴めないように何かが邪魔してるのかもしれませんわ」