第8章 呪いの家
「──よし!仕方ないがそれでいこう。ナル坊にうろつかれちゃ厄介だ。危険物だってんなら尚更だ。んで、綾子、結衣、麻衣。お前たちはどうする?」
「どうって……」
「つまり、おれたちはナル抜きでやらなきゃならねぇってことさ。あいつはまったく役に立たん。この状態じゃ、つれて逃げ出す訳にもいかんだろう。やれる限りのことをやるか、それたもナルを見捨てて逃げるか──」
「み、見捨てるなんて出来るわけないじゃん!」
「そうだよ!ナルを見捨てるなんてできない!残るよ!」
今までナルに助けられたことはある。
麻衣のことも何度も助けてもらっているのに、そう簡単に逃げ出すなんてできるわけがない。
「じゃ、結衣と麻衣は残るんだな。綾子は?自信がなけりゃ引っ込んでろ」
「……あんたは自信があるようねぇ?」
また言い争いが始まりそうな感じがして、あたしは眉を寄せる。
相変わらずこの二人はお互いを煽りあっているが、少しは仲良くなれないのだろうか。
「なんとかなるんじゃねぇの?まあナル坊が使えんのは痛いが、おれたちにはヤツにないもんがあるからな」
「それは初耳だわ。なんなのか聞かせてもらってもいいかしら?」
「謙虚な姿勢と親切な性格」
その言葉にあたしたちは吹き出す。
確かにナルには絶対無いものである。
「いえてる!」
「ナルには絶対無いもんねぇ!」
「しょうがない、助けてやるか!ナルを見捨てるようじゃ人間おしまいだもんね」
(そう、あたし達が助けなきゃならない……)
ナル抜きであたしたちは動くことになった。
取り敢えず今日は休むことになり、あたしたちはベースの隣の部屋で眠ることに。
だが、眠れなかった。
ナルが憑依された時の記憶や綾子が首を絞められていた時の記憶が蘇り、どうしても寝付けない。
(寝なきゃ……明日に響くのに)
明日から本格的に動き始める、ナル抜きで。
きっと大変だろうと思いながらも、寝返りを打つが眠気は一向に来ない。
「……ベースの所にいって、お茶でも飲もうかな」
ゆっくりと起き上がれば、麻衣が身体をまるくさせて寝ているのが見えた。
隣には綾子が気持ちよさげに眠っている。
麻衣の頭を撫でて、あたしは部屋を出た。
そしてベースへと向かい、扉を開ければ明かりがついているのが見える。