第1章 悪霊がいっぱい!?
「原さんっ!」
「ど、どうしたの、ジョン?」
「原さんが二階の教室から落ちたです!」
駆けつけてみれば、二階の壁は穴が空いていて真砂子が地面に倒れていた。
すぐに救急車が呼ばれて真砂子は運ばれていったが、まさかの事態に騒然としていた。
「酷い怪我は無いみたいで良かったけど……」
「……真砂子が落ちたのってさっきイスが動いてた教室からだよね」
「……壊されたままの西側の壁に風雨よけのヤワなベニヤ板が貼ってあった。それが原さんがよりかかった重みで裂けたんだ」
ナルによると、救急車に運ばれる際に真砂子はこう言ってたらしい。
『あたしくの不注意です。これはただの事故ですわ。やはり霊はいません……』
その言葉に納得する人は少なかった。
「強がりじゃないの?アタシはここには悪霊がいると思うわ」
「お前さんが除霊しそびれたやつがな。こいつは危険だぜ」
「危険!?」
「そうなの!?」
「除霊に失敗した霊は手負いの熊と同じよ。とても凶暴になる……」
「じゃあ真砂子のケガは巫女さんのせいなんじゃない!」
「なによ!」
「こら、麻衣!その言い方はないでしょ!」
流石にその言葉は駄目だと、麻衣の腕を引っ張る。
巫女さんも強がったように麻衣を睨みつけていれば、ナルの鋭い言葉が飛んできた。
「早まるな。ビデオを見る限りあれは単なる事故だ」
「本当に事故なの?」
「そうだよ。ちゃんとした理由があるかもしれないけど、事故とか自殺とかが続くから幽霊屋敷とか不吉だとかいわれるわけでしょ?じゃあどうして続くの?そこがフシギなんじゃない!」
「確かに麻衣の言う通りだよ、ナル……」
「……たしかにそうだが。でもこの校舎はどこか変だ、納得できない。機械に反応がなさすぎる。気温の低下もイオンの偏りもないし、静電気量も正常。データは完全に正常値を示しているんだ」
ナルは正常だと言い張る。
だがそれでもおかしい事が立て続けに起きている。
「でも巫女さんが閉じ込められたのは?わたしが襲われたのは?ビデオが消えてたりガラスや黒板や……イスが動いたのは!?」
「だから納得いかないといっている」
「いないフリができるぐらい強い霊かもしれないじゃねーか」