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幻想科学物語

第16章 Z=15 魔導士の剣、科学の灯






「それなら良かったよ。さ、もうすぐ日も暮れるし、一緒に戻ろう。」


そういうなりさり気なくルーチェに手を差し出す。
ルーチェも躊躇いなく、ゲンの手の上にそっと自分の手を重ねた。


すっかり日が落ちて、2人の影も真っ直ぐに伸びていた。
静かに2人だけの足音が響く。


「ルーチェちゃん、あのね。」


ゲンが口を開いたの暫く歩いてからだった。
ルーチェは無言でゲンの横顔をみる。その表情はいつものヘラヘラしたものではなく、照れくさそうな表情だった。


「そのさ、無理に強がらなくていいんだよ。頼ってもいいんだよ。」


「え…」


ルーチェは少しだけ目を見開いて、すぐ視線を落とす。
彼女の表情は無表情に見えたが、すこしだけ、照れくさそうだった。その証拠にすこしだけ耳が赤くなっている。


「……頼ったらすぐ図に乗るでしょ、ゲン。」


「あはは、ドイヒー。俺、こーみえて誠実と信頼の塊なんだけどなぁ。」


「現実見たら?」


くすり、とゲンが笑う。
ルーチェもボソッと肩の力が抜けたようにつぶやいた。


「たまには、話聞いてもらおうかな。」


「え?それって信頼してくれた、ってこと?」


「…うるさい。」


ルーチェの言い方は冷たいものだが、どこか柔らかかった。
やがて、自分たちの本拠地の近くまできて、火のあかりがチラチラとみえてきた。


「ルゥルゥちゃん♪」


「……その呼び方は母様と先生だけの呼び方!」


「えぇー、2人の次にお近付きになれたかな?っておもったのに。」


ルーチェは許可してない!と拗ねたように言うが、どこか照れくさそうだった。
ゲンは、そんな彼女の感情の変化を見逃さず、ニヤリと笑った。


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