第16章 Z=15 魔導士の剣、科学の灯
ちゅんちゅん……
小鳥のさえずる音でルーチェは目を覚まし、ぼーっと周りを見渡す。
(あれ…ここは……)
ルーチェがあたりを見回すと、だんだんと意識が覚醒してきた。
と、同時にルーチェはガバッと起き上がる。
「は、そうだ。司さんのバイタルを確認しなきゃ…」
司のことを思い、布団から出ようとしたとき、訪問者が現れた。
「おっはー、ルーチェちゃん。おきた?」
「……あさぎり、ゲン…」
入り口には、ごはんのトレーをもった紫を基調とした和風な服装に身を包んだ男、あさぎりゲンが立っていた。
「とりあえず、目を覚ましたんだね。よかった。」
そういうと、ルーチェの寝床のそばに座る。
「司さんは…どうなったの…」
「……ルーチェちゃん、司ちゃんは、コールドスリープさせることになったよ。今はみんなで冷蔵庫作成中。もちろん、司ちゃんは現在息をしているよ。」
ゲンの報告を聞いて、ルーチェは拳を握りしめる。
その体は悔しさに震えていた。
「この手で、救えなかった。悔しい…」
震えて泣き出しそうになっているルーチェ。
ゲンはルーチェの拳の上から手を重ねる。
「ルーチェちゃん、救えなかった事実よりも"救おうとする意思"が一番大事なんだよ。ルーチェちゃんはよくやったよ。」
返す言葉なく、ルーチェはただ俯く。
--未来に繋ぐ。
千空に言われた言葉が、浮かんだ。
「……ありがとう、ゲン」
「どういたしまして。ゆっくり休んでね。」
そういうとゲンは朝ごはんだけを置いて、テントからでていった。
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