第11章 Z=10 それぞれの贈り物
ゲンは言葉を切ったルーチェの方を見る。
すると彼女は、無表情ながらも、そのピンクの瞳は揺るがない芯が宿っていることに驚いた。
ルーチェは夜空を見ながら言葉を続ける。
「そんな日々を過ごしていたら、いつの間にか怖さはなくなった。科学王国のみんなとなら、怖くない。むしろ、私が強くならないとって思えた。」
「そっか。ルーチェちゃんも丸くなったね。」
ゲンがそういうと、ルーチェは夜空からゲンの方へと視線をうつす。
ふと、2人の視線が絡んだ。
「私が丸くなるようにどこかのメンタリストが、裏で糸を引いて村のみんなを操った、ちがうかな。」
いたずらな小悪魔のように笑うルーチェ。
ゲンはこんな笑顔もできるんだ、と素直に感心しつつも初めて見た彼女の表情に鼓動が早くなるのを感じた。
(前々からおもってたけど、ほんと人の理性を試してくるよねぇ、ルーチェちゃんは。これ、絶対わかってないよね。)
ゲンは冷静に分析しながら呼吸を落ち着かせる。
さすがはメンタリストというべきか、早くなった鼓動や呼吸はいつも通りとなり、ヘラっとした笑顔を貼り付ける。
「さぁ、なんのことでしょう。おれはペラペラな蝙蝠男だからねぇ。自分に得が回ってこればそれでいーの。」
「ふーん、そういう事にしておいてあげる。今日はもう戻る。」
「おやすみ、ルゥルゥ。」
それは母様と先生だけの呼び方だ、と顔を真っ赤にさせて告げると足早に寝所へと歩いていった
ゲンは、真っ赤になりながらも、その実少し嬉しそうだったルーチェの顔を思い出しながら、自分の寝床へともどっていった。
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