第18章 須臾
亜白隊長が騒ぎを聞きつけて来て、彼に落ち着けとビンタをした。
彼を宗くんと呼んでいたあの人もいる。
フラフラと立ち上がってその人の前に行き、よかったですね、もうあなたのものですよ、と泣きながら笑った。
彼女は困惑している。
知らなかったのだろうか。
彼が嫌やと私の名前を呼び続けている。
亜白隊長が、彼が落ち着くまで私に近付けるなと言って、日比野先輩と一緒に私を連れ出してくれた。
「何があったんだ?私に話してくれないか?」
なんの部屋かはわからないが、テーブルと椅子がある部屋に連れて来られ、亜白隊長は私を座らせると目の前に座って、先輩は少し離れたところに座る。
俺、いない方がいいか?と先輩がそろ〜っと聞いてくる。
ここまでの大事になってしまったのだ、話さなければいけないだろう。
先輩にいてくださいと言って話し始める。
嗚咽をしながらなんとか見たことを全て話し、泣き崩れる。
「好きなのに…こんなに好きなのにっ、どうしてっ…!好きになんてならなきゃよかった!!」
隊長の胸で泣き叫んだ。
「それで、婚約破棄をしたのか?」
指輪等は返したが、破棄になったのかはわからない。
彼が拒んできたから。
指輪とお金を返したことを言うと、お金を借りていたのかと聞かれる。
「手術したんです…処女膜切開の……その費用を彼が出してくれて…。」
「っ!それは、保科がさせたんじゃないのか?」
コクっと頷いたが、私の為でもある。
亜白隊長は心底嫌そうに顔を顰めた。
「あいつ、そこまでさせといて、何をしている。」
今にも彼を殺しに行きそうな目をしていて焦った。
だが、2人のプライベートなことだ、あまり口を挟めない、と苦虫を噛み潰したような顔をする。
副隊長がそんなことを…と先輩が呟いた。