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あの日あなたに恋をした【怪獣8号:保科宗四郎】

第16章 10号


小此木さんとの話が終わったのか、少し後ろを歩く私の名前を呼んでいる。

もう仕事モードではないのだろうか。
声が柔らかくなっている。


身体は進行方向を向いたまま顔を振り向かせ手を差し出しているので、駆けていき背中に飛びついた。

少しフラついたが倒れることはせずに私を受け止め、身体に絡めた太腿を持ちそのまま歩き出す。


「びっくりしたやんかあ、どしたん?ほんまに美影ちゃんは甘えん坊でちゅね〜。」


「いや、さすがに…赤ちゃん言葉はきつい。」


「おい、振り落とすぞ。」


振り落とされたくはないので、謝りながら顔を首筋に擦りつけた。


重くないかと聞くと今更何を言っているのだと笑われた。


そのままおんぶをしてもらいながら廊下を歩いていると、あかりちゃんとハクアちゃんが現れ声をかけられる。

まさか、こんな時間に出歩いているとは思わなかった…。


降ろしてと言っても降ろしてもらえず、恥ずかしくて彼の肩に顔を埋めた。

その為、怪我でもしたのかと聞かれ焦ってあたふたしてしまう。


「はははっ、甘えとるだけや。」


なんでそんな、はっきり言っちゃうのぉお!!
あぁもう、顔あっつい…。


2人は苦笑いしながらどうしてここにいるのかと聞いてきた為、非番だったから会いに来たとボソボソと呟いた。


すると、あかりちゃんが私の指にある指輪に気付いたようだ。

そんなのしてたっけと聞いてくるが、宗四郎さんが答えてくれると思っていたら、全然答えてくれない。


「こ、婚約指輪……宗四郎さんが、くれた…。」


2人は驚いていたが、すぐにおめでとうと笑顔を向けてくれる。

ありがとうと言いながら、顔が完全に見えなくなるように腕で隠しながら、宗四郎さんの肩に蹲る。


「ほな、僕らはそろそろ戻るで。お前らもあんま遅うならんようにな。」


彼のその言葉を聞いて、少し顔を上げてまたねと手を振った。


2人から離れて恥ずかしかったと訴えれば、君が乗ってきたんやろと笑われる。

降ろしてって言ったのに…。

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