第15章 不信
美影は僕の好きなもん知っとる?と聞かれて、少し考える。
これはどう答えたらいいのだろう…普通に好きな食べ物とか?それとも…
「…私?」
「……ふっ!そうやな!確かにそうやわ!僕は美影が好きや!あははっ!」
瞳を見せたかと思うとすぐに閉じられて八重歯を見せて笑う。
これは…違ったらしい。
「モンブラン?珈琲?あと…本、というか読書?あと前に単純なやつ好きって言ってた。」
モンブランと珈琲は小此木さんに教えてもらった。
読書は、前に家にお邪魔した時、本がいっぱいあったから。
なんでぇ、なんで知っとんのぉ?としゃがみこんでベッドに顔を埋めた。
なんでと言われても…好きな人のことは知っておきたいし。
頭を撫でると顔を上げたので、元気出してとおにぎりを差し出した。
「おにぎりで元気なる思ってるん?食べるけど。」
「あ…鮭なくなった。」
まだ一口しか食べてなかったのでほとんど具を食べていなかったのだが、宗四郎さんの一口がでかすぎて具の部分を全部食べられてしまった。
まあいいかと思いそのまま具がなくなったおにぎりを食べる。
自分で食べるから他のを食べろと言われたが、そのまま残っていたおにぎりを口に詰め込んだ。
ほっぺがパンパンになってしまい、豪快に笑われた。
笑いながらお茶のキャップを開けて差し出してくる。
零れそうなんだけど…。
差し出してくれたお茶を飲んで口の中の物がなくなり、また袋を漁る。
結構お腹が空いていたみたいだ。
サンドイッチ食べたいけど、1個でいいんだよな…。
「宗四郎さん、これ、1個食べてくれる?」
「ん?食えへんの?」
やっと笑いが落ち着いたのか、ええでと言ってくれたので、包装を開け差し出す。
そうやって2人で他愛もない話をしながら食べていると、怒りなんてどこかに行ってしまった。