第3章 辛苦
あれから2週間、また三浦を呼び欲を吐き出して追い出した後廊下を歩いていると、市川と話している彼女を見つけた。
いや、話しているというより…彼女は縋り付き、市川は困惑している。
「ちょっ、先輩!?俺は保科副隊長じゃないっすよ!?」
なんで僕の名前が出てくる。
市川に話したんか?
市川が少し彼女を離すとどうしたのかと尋ねた。
彼女はというと、俯いたまま首を横に振るだけだった。
あれは……話してなさそうやな。
もし彼女が誰かに話したとしてもしょうがない。それだけのことをしている。
なのに、悔しさを覚える。
市川のそこは僕のはずなのにと…。
いつも終わった後は僕に甘えていたのに、今日はそれがなかった。
どこにも行かせへん言うたやろ……。
そのまま立ち去ろうとしたのに、僕の身体は2人に向かっていた。
「三浦、ちょっと話があるんやけど、ええか?」
僕の声にわかりやすく反応し、怯えながら敬礼をする。
敬礼したままの市川を置いて、頭の横にある彼女の腕を掴んで連れ出した。
誰も通らないような廊下の角に追いやり、彼女の身体を壁に押し付け、逃げられないように両手を壁について囲う。
まさかこの僕が壁ドンする日が来るとはな。
「ごめんなさいっ!話してないです!誰にも言ってませんからっ……っ!」
必死で謝る彼女を無視して、僕よりも少し低い位置にある肩に頭を預けた。
「今度は市川か?どこにも行かせへん言うたやろ。大人しく僕のもんだけ咥えてろ。」
彼女の肩が震えて、後頭部に温かさを感じる。
撫でられているのか?僕が?三浦に?
「なにかありました?嫌なことでもあったんですか?」
お前のせいや、とは言葉に出来ず、ただアホとだけ呟いた。