第14章 保科家
「きっんも。お前、そのうち美影ちゃんが離れてくで。うざいって。」
もう少しオブラートに包んであげてくださいよ…。
そして、お義兄さんのその一言でまた言い合いが始まる。
あなたたち、一体何歳なんですか…私より年上でいい大人ですよね。
宗四郎さんも、普段あんなに冷静なのに、どうしてお義兄さんの前ではそうなのか…。
とにかく、宗四郎さんが飛行機に遅れてはダメなので引き剥がして、早く行ってと睨む。
本当は睨みたくないのに…。
「宗四郎さん、本当は私だって離れたくない。けど、強くなる為には…あなたの隣で戦えるようになる為には、必要なことなの。……愛してる。」
寂しくて泣きそうになりながらも微笑めば、ふわっと大好きな匂いに包まれる。
「僕も、愛してる。」
胸がキュウとなって、嬉しくて寂しくて...このまま離れたくなくなる。
本当に時間が迫っているので、宗四郎さんは電話は1日10回、メッセージは何百回でもええと言いながら電車に乗って行った。
1日10回って…さすがにそれは無理だろうと笑ってしまったが、そのまま彼が乗った電車が見えなくなるまで見送った。
私もお義兄さんと一緒に電車に乗って基地に向かう。
「弟ながら、結構やばいな。うざいやろ?疲れへん?」
「あ、いえ…嬉しいです。付き合う前は私の方がやばかったと思うし…。」
馴れ初めを聞かせてくれと言われて焦ったが、私の方から好きになって、無意識で甘えてしまったら好きになってくれた、と知られたらまずいこと以外を話す。
そしたらお義兄さんは、あいつは幸せ者やなと笑った。
「これからも弟のこと頼むな。あいつ、音信不通やねん。俺からの連絡、全部シカトしやがる。美影ちゃんのこと知ったんも、母さんが教えてくれたんや。どんなにうざくても、最低なことしたとしても、嫌いにならんでやってくれ。」
お義兄さんはいつもああやって宗四郎さんのことを揶揄っているけど、本当は誰よりも彼のことを思っているのだろう。
すごく柔らかい表情をしている。
もちろんですと答えて、笑顔を向けた。