第10章 第1部隊
鳴海隊長はまだ一緒にいるならボクは帰る、ちゃんと送り届けろと宗四郎さんに言って帰っていった。
ベンチに座らせられるが、恥ずかしくて顔を見ることが出来ない。
宗四郎さんと離れてからまだそんな時間が経っていないというのに、相当寂しかったらしい。
いつもはずっと私の視界の中に彼がいたから…。
「こっち見てやー美影ー。僕、君の可愛い顔見たいんやけど。見せへんやったら帰ってまうでー。」
「っ!?……いじわる…。」
帰って欲しくなくてバッと音がなる程勢いよく彼の方を見ると、片側の口角を上げ片目だけを開けて私を見ていた。
私の顔を見るとすぐに八重歯見せて笑う。
「美影ってほんま甘えたよな?試験の後もそうやったな。副隊長副隊長って僕に甘えて…。」
恥ずかしくてもうやめてと言うように彼の口を押さえた。
甘えん坊な女は嫌ですかと睨む。
「そないなわけあらへんやろ。可愛ええ思うとるよ。君やなかったら鬱陶しいだけやけど。」
口を押さえた手はすぐに引き剥がされて、好きで好きで堪らないみたいな視線を向けられる。
それが気のせいじゃないということは、彼の言葉ですぐわかる。
君が甘えてくるから鳴海隊長を殴れなかったと軽く言っているので、それはよかったですと返したら、なんでやぁと肩を抱かれた。
「ほんまにムカついてんねんでぇ…ちゅーどころか泣かせおって…。」
私の頭を引き寄せてグリグリと頬を擦り付けてくる。
やめてと笑えば嫌やと機嫌良く笑うので、もっとこのままでいたいと思ってしまう。
そろそろ帰さんとなぁと月が明るくなってきた空を見上げてそう言ったので、途端に寂しくなり胸がきゅうと締め付けられる。
もう少し一緒にいたいと無意識で彼の服を掴み嫌と呟いてしまった。
「せやなぁ……腹減らへん?なんか食いに行こうや。」
うんと食い気味で返事をすると微笑んでスマホを取り出す。
何を食べたいか聞かれたので、少し考えてパスタなんてどうかと答えれば、ええなと笑って検索し始める。
この辺は私も宗四郎さんもあまり詳しくない。
私にも見えるようにスマホを持ち、一つ一つ見えやすいようにゆっくりスライドする。