第5章 嫉妬
鉄の味がするので血が出ているかもしれない。
口を開けろと言われるが、あまり血を見せたくないと思い、唇を真一文字に結んだ。
それを見た彼は、顎に手をかけ無理やり指を突っ込み開けてきた。
観念して舌を出す。
「血ぃ出てるやん。歯に擦れたか?無理やり離したからやな、ごめんなぁ...。」
私が無理やりキスをしたのが悪いのに、どうしてそんな顔をするの...。
まるで自分が傷付いたみたいな顔しないで...。
宗四郎さんは私の手を引いてベッドがある部屋に向かう。
脱衣所に行き洗面台まで誘導され、うがいをしろと言われた。
口の中から吐き出した水は、少し赤く染まっていた。
うがいが終わるとタオルで口を拭かれ、そのままベッドまで行く。
「見せてみぃ。」
私をベッドに座らせて顔を彼の方に向けられたので、言われた通り舌を出した。
どうやら、先程よりは血が出ていないらしい。
先程よりも痛みがないので、もう少しで血も止まるだろう。
また怪我させてもうた、と私の顔を引き寄せて背中を丸めながら自身の胸に収める。
全部、私が悪いのだが...。
「大丈夫ですよ。......私、そろそろ戻りますね。」
「怒ったんかぁ...?ごめんて...。」
別に怒っているわけではないので、身体を反らせて宗四郎さんの背中に手を回した。