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あの日あなたに恋をした【怪獣8号:保科宗四郎】

第1章 プロローグ


もうダメだと思った。
私は今ここで死ぬのかと考えながら頭に流れ込んできた、面白みもない思い出に意識を落とそうとしたが、それは煙のように消え、意識が現実に戻されていく。

目の前にいた中型の怪獣は細かく切り刻まれ崩れていく。


「大丈夫か?怪我は……してるな。」


怪獣だったものを見ていた私の視界を、柔く笑ったオカッパに支配された。

そのオカッパはちょお我慢してなと言いながら、私の背中と膝裏に腕を回し抱き上げる。


「もう大丈夫やからな。今、安全なとこ連れてったる。」


少し目線を上げると、オカッ…防衛隊の人は目を閉じて進む先を向いていた。

その腕の温かさに酷く安心したのか、涙が溢れ、瓦礫で切れた足の痛みを思い出し、顔を顰める。
それでも、その人の顔から目は離せなかった。


「僕の顔、なんかついとる?」


「へ?……いえ、なにも…。」


そう問われても目を離せず…いや、見惚れたまま涙を流していた。




━━━━━━━━━━━━━━━………5年前…私が15歳の時の出来事だった。

あの日怪獣は、旅行中の私たちから大切なものを奪い、私に大きすぎる思いを与えた。

父を殺され憎悪に飲み込まれなかったのは、強い憧れと淡い恋心が私の中に芽生えたからだ。
と言っても、多少なりとも憎しみはあるのだが…。

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