第5章 栄光の目前 〜決勝トーナメント準決勝〜
●藤堂 天● 〜東京体育館〜
「行ったぞ!止めろ!!」
相手チームの自陣に乗り込んだキャプテンが、ペイントエリア内に止まったまま、そう指示してきた。
…て言うより、“止められている”。
中に残った相手選手に。
キャプテンの残りの仕事は、時が来るまでこのまま敵に捕まっていること。
あとは私たちの肩にかかっている。
『行かせるかよ…!』
そう言って私は、ドリブルでこちらに走ってくる相手選手の前に立ちはだかった。
・・・・
さっきはその挑戦に対して、ドリブルで迎え撃ったキャプテンと対峙し、結果敗北していたけど。
ボールを所持した相手に勝つくらい、私には訳無いと思うぞ?
もちろん、ここで取り返せればそれはそれでいい。
けれど相手は、全国大会常連校の選手だ。
単純な作戦じゃ捕まってくれないことは分かっている。
それでも私は、相手の進行を完全に止めたのを、確かに認識した。
それと同時に…
私の視界の端を、1つの人影が揺らした。
?「パス出すぞ!」
目の前の選手はそう言って、私の視界を揺らした人影…
距離を取って、真横を並走するように走っていた、もう1人の仲間に声をかけていた。
?「はい!」
そして、それに答えるように声を上げたその人影は…
うちのキャプテンの手から、ボールを弾き飛ばした選手だった。