第5章 栄光の目前 〜決勝トーナメント準決勝〜
●藤堂 天● 〜東京体育館〜
試合中だろうと。
“じゃなかったら”、なおさらだし。
あぁ~こりゃ荒れるぞ?
「あ"ぁ〜ヤダ!髪!
詩織!!
髪いまザシュッ!ってなった!!」
「え?もしかしてぶつかっちゃった??」
「もしかしなくてもぶつかったよ!!
ちょ、ガチやめてよね?!」
これだよ…
大方、隣にいる詩織の腕とかが当たったんだろうな?
真横の…しかも一番端にいるせいで全然見えねぇーから、「音声のみでお楽しみください」状態ではあるんだけれど。
大体の予想は出来る。
つか試合中に髪気にしてどうすんだよ。
どのみち汗でグチャグチャじゃねーか。
「これでも崩れないように
精一杯気を付けて動いてるんだから~!」
「試合に集中しろよ馬鹿!!」
「試合はちゃんとする!髪もちゃんとする!」
「器用に両立させようとすんなよ!
新婚の結婚生活か?!」
この通り。
紗恵(馬鹿)の“馬鹿持論”はぜー--んぶ隣にいるキャプテンが拾ってくれるから。
私は馬鹿の相手放棄。
あぁ〜…スポドリうめぇ…
「そ…そんな!何言ってるの?!
私の髪と試合…どっちが大事なのよぉ~?!」
「試合に決まってんだろ馬鹿者!」
話噛み合ってる上に家系が亭主関白だった。
「結婚したての“どっちも大事~”な
ラブラブ絶頂期は地区大会で終わらせろ!
全国で両立なんか出来るわけねぇーだろ!!」
「なに?!お前ら2人
いつの間に結婚してたんだよ?!!」
ここで馬鹿2こと“元祖馬鹿”がログインした。
「中学生って結婚できんのか?!」
詩織とキャプテンの間…
私たち5人のド真ん中に座ってる馬鹿が、よく分りもせずに参戦してきた。
にしてもスポドリうめぇーな~…
その様子を見かねたのか。
馬鹿2人+αに挟まれた詩織が、止めに入ろうとしたんだと思う。
「ま…まぁまぁ2人とも!
見た目気にするのはワタシも凄く分かるし…
それでもやっぱり大事なのは試合の方だと思」
「やだ詩織、嫁いびり~!!」
「え?“いびり”?!
え…ワタシ義母?!!」
結局、火に油注いだだけだったみたいだけどな。
いや…“飛んで火にいる夏の虫”って言った方が正しいのかも。