第5章 栄光の目前 〜決勝トーナメント準決勝〜
●藤堂 天● 〜東京体育館〜
“いて欲しい場所にいた”。
ほんとそれだけ。
“直感力”に近いのかもしれないけれど、詳しいことは紗恵(本人)しか知らないはずだ。
頭で理解する程度になら、私にも分かる。
だけど「それって天にも出来るのか?」って言われたら、まず出来ないだろうな。
私そこまで器用じゃねぇーし。
まぁ、紗恵(あいつ)のことで唯一断言できんのは。
“運なんて端から信じてない”ってことだな。
『ナイスカバー!よくやった』
ベンチへと戻った私は、そう言って紗恵に声をかけた。
ぶっちゃけ、さっきのは紗恵(こいつ)あってこその作戦だったから。
「へへ〜どんなもんよ♪」
先にベンチに腰掛けていた紗恵は、そう言って私に向かって戯けてみせた。
紗恵(こいつ)には分かるんだ。
簡単に言うと、私の“考えていること”っていうのが。
極端な“エース信者”だから。
…って、本人が言ってた。
私にはよく分かんねぇ。
そんなことを思いながら、私は自分の定位置に腰掛けた。
ベンチの1番端っこだ。