第5章 栄光の目前 　〜決勝トーナメント準決勝〜

●藤堂 天●　〜東京体育館〜


一度紗恵に回し、そして再び私の元に帰ってきたボールを真上に放ると。
次の瞬間には、ゴールネットを潜ってザシュッ！っと音を立てた。


なんだ…実際にやってみたら。
そんなにカッコよくは見えねぇーか？これ。


しかし、先ほどは私の強引なプレイに対して「慎重になれ」と言って、不満を表していたキャプテンは、


「ナイシュー天。よかったな今のは」


と、今度は不満を感じさせない様子で、私に声をかけてきた。
そしてそれは、キャプテンだけではなく、


「2人とも凄いじゃん！！」

「うぉ〜？！！お前らいつの間に
　そんなの練習してたんだよ？！！」


他の仲間たちも、例外ではなかった。
そして紗恵は、その中にいとも簡単に入って行き、


「んん〜？？ヒミツ〜♡」


と言って、とぼけてみせた。


「なに？！“秘密の特訓”ってやつか？！！」

「言い方考えろよお前ら…」


その中で、紗恵と詩織がハイタッチでもしてるのだろうか？
2人の「イェーイ！！」と言いう声の後に、勢いよく手を合わせるようなパチンッ！という音が聞こえてきた。


それを私は背中で聞いて、感じて。
「めっちゃ喋るじゃん、こいつら…」と思った。


しかし、それでよかったんだな？


要は今のプレイのお陰で、チームが暗い雰囲気にならずに済んだ。
反則、ファウルがチラついていた戦況に、全員が少なからずストレスを感じていたから。


でも今は、全員がその緊張から解き放たれて。
そのストレスを打ち砕いたとも言える、直前のプレイを称賛しているんだ。


カッコいい、よくないは関係ない。
“チームの連携”で点を稼いだ。
その事実が、仲間の士気を保つ意味でプラスになった。


そんなことを思いながら、私も仲間のいる自陣に向かって歩き出した。


そんな時、チラッと聞こえてきたんだ…