第5章 栄光の目前 〜決勝トーナメント準決勝〜
●藤堂 天● 〜東京体育館〜
先ほど私が相手チームに嗾けたのと同じように、今度は私が嗾けられているのだろうかと。
1人静かに仮説を立てる中、私の行く先を阻もうとして、目の前に立つ相手選手は、
?「今度は回させねぇーよ!!」
と、「どうしようか」と頭を悩ませている私に、追い打ちをかけるように口を開いたんだ。
たったそれだけのことが、私の中の“焦り”の肥大を加速させた。
・・
やっぱり、そうなんだろう。
ギリギリになって私が焦ったところに漬け込んで、ボールを奪うつもりだったんだ。
相手チームのその策略から逃れるためには、やはり“パス”だ。
パスでボールの軌道を仲介しなければ、この状況では点を稼ぐどころか、ファウルを未然に防ぐこともままならない。
パス…
だったら誰にパスを出す?
やることは決まったが、具体的にどうすればいいのかは決められず。
私は未だに頭を悩ませていた。
しかし…
悩むだけ、無駄なのかもしれない。
この戦況において、1人で点を稼げないのは百も承知。
それでも「誰にパスを出せばいいか」とか。
「ルートが無いから決められない」とか、それは私が悩むことではない。
別の仲間に、そこは任せてみてもいいだろう。
むしろ、こういう時に頼っておかないと、後でうるさいからな。
あいつ…