第6章 即ちそれ、“強豪”なる者たち
●藤堂 天● 〜東京体育館〜
?「午後の決勝。頑張って!
あたしらは3決で観られないけど…」
?「負けたウチらの分も、頑張ってよ!」
こうして、束の間の談笑を終えた私たちは、改めて相手選手陣と向き直った。
ずーっと相手チームのキャプテンを肩車していた詩織も、ようやく身軽になることが出来たようだ。
そして、未だ他人の熱が冷めぬ私は、ここまでの一連を振り返っていた。
今日、この出会いの中で学んだ大切なことを。
全国に来て、私が手に入れたもののことを。
目の前にいるこの人たちは、生き様で私にそれを教えてくれた。
そして、間違っても忘れてはいけない。
こうして、一戦一戦を勝ち上がるたびに。
その先に待つ試合は、もう私たちだけのものじゃなくなっているということを。
?「あなたたちが勝ってくれたら、
私たちも本望だ!
ベスト4に胸を張って
晴れやかに引退できる」
?「あ、もちろん!3決は勝つけどな?!」
今この時から、私のプレイはこの人達のものでもある。
それを背負って行くんだ。
それを理解しているのは、私だけじゃなく…
「先輩方、ありがとうございます。
精一杯頑張ります。」
もちろん、愛華も知っての上だ。
そしてその隣で、
「皆さんも、頑張ってください!」
人見知りを克服した様子の詩織が、楽しそうに笑っている。
「ほら、紗恵もこっち来いよ!」
「あ~聞いてる聞いてる!
もち優勝するっしょ!!」
そうやって、声をかけてきた史奈の腕に引き寄せられるがままに、紗恵も半ば強引に私たちに合流した。
こうして全員が改めて、過去の対戦相手である先輩たちの前に整列した。
そして私はこの瞬間…
「全国に来れて、どれだけ良かったか」と思った。
だから、こんなにも晴れやかな気持ちで。
全員で一斉に、
「『 ありがとうございました!! 』」
…って、言おうとしたんだけどな。