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宵闇の明けと想ふは君だけと〈中学編〉

第6章 即ちそれ、“強豪”なる者たち


●藤堂 天● 〜東京体育館〜


その時は確かに、並々ならぬ様子の険しい顔つきだったんだ。
それは私の頭に、「大会会場だろうが、いざとなったら武力行使しかない」という選択肢を生み出させるほどの。


?「あなたたち…!」


それなのに、その集団の先頭の人物…
名前は知らないのに、顔だけは記憶に新しいその人物は、試合中に4番を背負っていた。


キャプテンだ。


その人は、唐突に愛華の手を取ったかと思うと、目の前にいるうちの副キャプテンに、キラキラとした視線を降り注いでいたんだ。
直前までの顔つきとは打って変わって、瞳は輝き、表情は明るんでいた。


そんな表情、試合中も見ることがなかったのに。


愛華に触れられた時点で、私はその間に入るつもりでいた。
しかし、その姿のどこにからも悪意は感られず、私の脚はとうとう一歩も動かなかった。
急速な心情の変化によって、強張った体が変に空回りする感覚を覚えた。


戸惑う体に足並みを揃えるが如く、頭も混乱している私を置き去りに。
その人は愛華を見下ろしながら、立て続けにこう言ったんだ。


?「凄かったよ!さっきの試合!」

「『 え? 』」


私たちは全員、呆気に取られていた。
なぜなら、その時表情が変わっていたのはキャプテンだけじゃなく。
相手チーム、全員だったから。


?「あなたたち、本っっっ当に今年が
  全国初のチームなの?!
  ていうかほんとごめんね?!
  試合中にぶつかっちゃって!!」

「あ。いいえ…全然」


この時、急に手を握られた愛華は、桁違いに戸惑っていたかもな。
そしてそれを証明するかのように、言葉に詰まりながら愛華がそう口にしているのが、私には聞こえた。


すると、

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