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神スイング!!

第1章 スタート


「お疲れ様でーす!」

 練習を終えた選手たちが次々と引き上げるなか、私はユニフォームの袖をまくり上げ、グラウンドに残った。バットを握ると、黙々とティーバッティングを続ける。
 ここは新宿区のブルースタジアム。私は、甲子園大会でもなければ大学野球でもない、日本プロ野球機構(NPB)傘下の「メトロポリタンリーグ」に所属するチーム「東都ブルー・パワーズ」の一員となっていた。
 高校まで男子と一緒にプレーしてきた私が、野球を続ける道を模索し、ついにプロの門を叩いた。だが、実力は、下部リーグとも言えるメトロポリタンリーグ。しかも、男たちの中で唯一の女性選手。

「やっぱり、プロって厳しいな……」

 ふと、バットを肩に担いで呟く。周囲を見渡せば、すでに選手はまばら。練習熱心な投手がブルペンで投げ込んでいるくらいだ。

「おい、稲村。帰らねぇのか?」

 低い声が聞こえ、振り向くと、チームの中継ぎエースである瀬川翔吾が立っていた。彼はこのチームの中でも安定した成績を残している投手で、プロ野球の一軍クラスの打者とも互角に渡り合う実力を持っている。

「もうちょっとだけ。やっぱり打撃が課題なんで」

「お前、4番だろ? そろそろ体のケアもしっかり考えろよ」

 瀬川は呆れたように言いながら、ペットボトルの水を飲んだ。

「でも、打てない4番じゃ話にならないんで……」

 私は苦笑いしながら、もう一度バットを構えた。亜美は自身のことを打てないと思っている。ここまで(4月中半)打率.263 2本塁打である。

「まぁ、お前はすごいよな。正直、最初に女がプロに入るって聞いた時は、戦力になるとは思ってなかった」

「うわ、酷いこと言いますね!」

「けど、春のキャンプでのフリー打撃見て考え変わったよ。プロでも十分通用するフルスイングだった」

「……ありがとうございます」

 瀬川は無愛想ながらも、ちゃんと他人を見ている男だ。彼のような選手と一緒にプレーできるのは、私にとっても大きな経験になる。

「まぁ、これからだな。お前が本当にプロの世界でやっていけるかどうかは」

「……はい!」
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