第21章 もう一度貴方と(番外編3の3)
「…最後に一回、抱きしめてもいい?」
…最後?
私が顔を上げると、切なく微笑む悟さんが私を優しくだけど力強く抱きしめた。
私も、脇の下から手を回し悟さんの背中の服をぎゅっと握りしめた。
「は…離さないでっ」
力が少し緩まった悟さんを引き止めたくて、私は力一杯悟さんを抱きしめた。
ここで離したら、悟さんともう恋人に戻ることができない気がして。
「…」
「やだ。悟さん…離さないで!お願い…離れたくないーー…!悟さんのそばにいたい。この心臓の音をずっと聞いていたい。ずっと…一緒に…」
「……。」
何も言わない悟さんに、私はゆっくり胸から顔を上げ、悟さんの顔を見ると、ただただにっこりと笑っていた。
「記憶。戻ってるでしょ。」
「……っ!!」
にこにこ笑い続ける悟さんに、私は口をぱくぱくさせた。
「い、いやっ…!それはっ!」
「傑たちがにやにやしてる時点で、おかしいとは思ってた。あいつら前科あるから。」
そんな前から…というか、最初から気付いてたんじゃないのか。
私は驚きと、罪悪感と、困惑と、恥ずかしさで、その場から隠れたくて仕方なかった。
でも、私の腰の後ろにはがっちりと悟さんの手があって逃げられそうにはなかった。
「ご、ごめんなさっ…!」
「いやいや、別に怒ってないって。やだな。せっかくの記憶戻ったんだしね。嬉しいことじゃない。」
その優しく言葉が逆に怖かった。
「でも何でがそんなこと?って考えたんだ。なんで、記憶が戻ってないフリをするのかって。」
「……っあ」
口をぱくぱくすることしかできなかった。